不屈の男、米で映画化

 駐車違反で服役し、子連れのホームレスとして地下鉄の駅などで暮らした黒人男性が、その後、証券業界で成功を収め、億万長者となった波瀾(はらん)万丈の人生ドラマが全米で話題を呼んでいる。テレビが紹介したのがきっかけだが、来年にはハリウッドの大手映画制作会社、コロンビア・ピクチャーズが映画化。主人公は人気俳優、ウィル・スミスが演じる。
 この人物はクリス・ガートナーさん(49)。ルイジアナ州で生まれ、教師をしていた母親に女手ひとつで育てられた。高校卒業後、海軍を経てサンフランシスコで医療関係の仕事に就き、一九七八年には結婚。息子もできた。
 念願だった高給の株式ブローカーへの転職話が舞い込んできたが、経験も人脈もないため結局採用されず失職。妻子にも見捨てられた。そのうえ、路上駐車違反の罰金(千二百ドル=約十二万八千円)未納で刑務所へ。
 十日間服役し、出所後、薄給の株式ブローカーの見習いとして再出発するが、別れた妻が彼に幼い息子を押し付けた。宿泊先の下宿は子供との同居は認めておらず、彼はホームレスに。三十歳の時だった。
 しかし、昼間は見習いとして猛烈に働き、夜は息子と一緒に地下鉄や空港のトイレで寝泊まりした。食事は貧困者用の給食施設で済ませた。こうした奮闘ぶりが大手証券会社のトップの目にとまり、その後、着実にキャリア・アップを重ねた。
 八七年十月にはシカゴで自分の会社、ガートナー・アンド・リッチ証券会社を設立。同社は後にニューヨークとサンフランシスコにもオフィスを構え、これまでに累計約五十億ドル(約五千三百億円)の商いを行った。
 現在のガートナーさんは高級ブランドのスーツと靴、そしてマイルス・デイビスのレコードであふれる豪邸三軒のオーナーだ。
 今年一月、米三大ネットワークのひとつ、ABCがニュース番組で彼の半生を紹介。「私はホームレスだったが、ホープレス(希望がない)ではなかった」「母はいつも私に『あなたが望むなら、百万ドル(約一億円)だって手にすることができる』と説いた」と語り、サクセス・ストーリーが大きな反響を呼んでいる。
産経新聞 5月25日16時4分更新記事)

「ホームレスだったが、ホープレスではなかった」・・・めっちゃいい言葉だなあ。